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はじめに
「ネットで拾った面白画像を動画に入れたら、クライアントのチャンネルがBANされた…」
「『修正は何度でも無料です!』と言って仕事を請けたら、終わりのない修正地獄に落ちた…」
「口約束で納品したのに、いつまで経っても報酬が振り込まれない…」これは怪談ではありません。動画編集界隈で毎日のように起きている「実話」です。
動画編集のスキルがあっても、法律の知識がゼロだと、ある日突然、損害賠償を請求されたり、タダ働きさせられたりするリスクがあります。
フリーランスにとって、法律と契約書は「面倒な書類」ではなく、「自分とクライアントを守る最強の盾」です。本記事では、難しい法律用語を使わずに、「ここだけ守れば絶対に裁判沙汰にはならない!」という著作権と契約のボーダーラインを理解する動作を徹底解説します。
転ばぬ先の杖として、必ず最後まで目を通してください。
1. 動画編集者が一番やらかす「著作権」の罠

「みんなやってるから大丈夫でしょ?」
この思考停止が一番危険です。YouTubeの著作権検知システム(Content ID)は超高性能です。数秒のBGMや画像でも容赦なく検知されます。


特に僕たちが受けるのは「企業の案件」です。もし著作権侵害で訴えられたら、クライアントの会社にも迷惑がかかるし、最悪の場合、**損害賠償請求**が来ることもあるんだよ…!

「フリー素材」と「著作権フリー」は別物
まず、最大の勘違いを正しましょう。
ネット上にある**「フリー素材(Free)」**という言葉。これには2つの意味が混ざっています。
1. **無料(Price Free)**:タダで使っていいよ。
2. **権利放棄(Rights Free)**:著作権なんてないよ。
世の中の「フリー素材サイト」の99%は、**「1. 無料だけど、著作権は作者にあるよ」**というパターンです。
つまり、「無料で使わせてあげるけど、私の決めたルール(利用規約)は守ってね」という契約なのです。これを破ると、無料ではなくなります。
BGMにおける「商用利用」の落とし穴
最近増えているトラブルが、「個人利用なら無料だけど、企業案件(商用)なら有料」というケースです。
* **個人利用**:自分の趣味のYouTubeチャンネル(収益化なし)、学園祭の動画など。
* **商用利用**:**クライアントワーク(動画編集案件)**、収益化しているYouTubeチャンネル、企業のPR動画。
私たち動画編集者の仕事は、お金をもらって動画を作るので**100%「商用利用」**に当たります。
「個人利用限定」のBGMをクライアントの動画に使ってしまうと、後から数万円の追加料金を請求されることがあります。必ず利用規約の**「商用利用(Commercial Use)」**の欄を確認するクセをつけてください。
【保存版】クリエイティブ・コモンズ(CC)早見表
海外の素材サイト(FlickrやSoundCloudなど)でよく見る「CCライセンス」。
このマークの意味を知らないと、地雷を踏みます。わかりやすく表にまとめました。
| マーク | 名称 | 動画編集者にとっての意味 |
|---|---|---|
| CC0 | パブリックドメイン | 【最強・安全】 著作権放棄。商用OK、加工OK、クレジット表記不要。 これを選べば間違いありません。PexelsやPixabayなどは基本これです。 |
| BY | 表示 | 【条件付きOK】 使っていいけど、「作者名と作品タイトル」を表示してね。 (YouTubeの概要欄にURLを貼る必要があります) |
| ND | 改変禁止 | 【動画には不向き】 そのまま使うならOKだけど、トリミングや色変え、文字入れなどの「加工」は禁止。 動画素材としては使いにくいです。 |
| NC | 非営利 | 【絶対NG!】 「お金儲けに使っちゃダメ」という意味。 クライアントワークでは絶対に使ってはいけません。 一番訴訟リスクが高いのがこれです。 |
**表の補足解説:**
特に注意すべきなのは**「NC(非営利)」**です。
「これいい曲だな〜」と思ってダウンロードし、企業のPR動画に使ってしまうと、完全にアウトです。
また、**「BY(表示)」**も要注意です。クライアントによっては「概要欄に変なURLを載せたくない」と断られる場合があります。
基本的には、何も考えずに使える**「CC0」**の素材だけを探すのが、プロとして一番安全な立ち回りです。
2. 肖像権と「ミーム素材」のグレーゾーン

著作権(作ったもの)だけでなく、肖像権(人の顔)にも注意が必要です。特にVlog系や街中でのロケ動画の編集で問題になります。


例えば、遠くの群衆の一人として映っているならセーフ。でも、**「その人の顔がはっきりわかって、メインで映っている」**ならアウトだね。
通行人の顔には「ボカシ」が鉄則
街中で撮影した素材で、通行人の顔がハッキリ映っている場合、そのまま公開すると**「肖像権侵害」**になります。
* **基準**:その人が動画を見て「あ、これ自分だ」と特定できるかどうか。
* **対策**:Premiere Proのトラッキング機能を使って、モザイクやボカシを入れる。
クライアントから「ボカシ入れなくていいよ、面倒だし」と言われても、「後でクレームが来ると動画を削除することになるので、リスク回避のために軽く入れますね」と提案するのがプロの仕事です。これが信頼に繋がります。
ネットの「ミーム素材」は使っていい?
海外の面白動画や、アニメの切り抜きを使った「ミーム(Meme)」が流行っていますよね。
「猫が踊ってる動画」とか「アニメキャラが驚いてるシーン」とか。
結論から言うと、あれは厳密には**著作権侵害**の可能性が高いです。
YouTube界隈では「宣伝になるから」と黙認されているケース(親告罪)が多いですが、あくまで**「著作者が訴えていないだけ」**の状態です。
**【プロとしての判断基準】**
* **エンタメ系YouTuber**:リスクを承知で使う場合もある(グレーゾーン)。
* **企業のPR動画・広告**:**絶対に使ってはいけません。**(コンプライアンス的にアウト)
「クライアントのリスク許容度」に合わせて素材を選ぶ動作 が求められます。迷ったら使わないのが正解です。
3. 未払いを防ぐ「業務委託契約書」の作り方

「契約書なんて作ったことない…難しそう…」
大丈夫です。弁護士に頼まなくても、今はネット上にテンプレートがたくさんあります。
重要なのは、契約書を交わすことそのものより、**「揉めそうなポイントを事前に握っておく」**ことです。


それに、契約書は相手を縛るものじゃなくて、**「お互いの認識ズレをなくすための確認書」**だと思えばいい。
なぜ「口約束」や「LINE」ではダメなのか
法律上は口約束でも契約は成立します(諾成契約)。
しかし、トラブルになった時に「言った、言わない」の水掛け論になります。
* クライアント「修正は無料って言ったよね?納得いくまで直してよ」
* あなた「いや、3回目からは有料ですって言いました!」
* クライアント「証拠あるの?」
この時、証拠がLINEだけだと弱いです。特に**「SNSのDM(Twitterなど)」**だけで仕事を受けている人は要注意。アカウントが凍結されたり削除されたりしたら、連絡手段も証拠も全て消えて、報酬が回収できなくなります。
【チェックリスト】契約書に絶対入れるべき5項目
テンプレートを使うにしても、以下の5つだけは必ず自分の目で確認し、修正してください。
ここさえ押さえておけば、致命傷は防げます。
| 項目名 | 内容とチェックポイント |
|---|---|
| ① 業務範囲 | 「動画編集」とはどこまでか? (サムネ作成は含む?素材探しは?企画構成は?) ここが「動画編集一式」みたいに曖昧だと、あれもこれもと無限に作業させられます。 |
| ② 報酬と支払時期 | いくら支払うか?いつ支払うか? (例:月末締め翌月末払い) 消費税は「税別」か「税込」か?源泉徴収は引くのか?まで明記しましょう。 |
| ③ 著作権の帰属 | 納品した動画の権利はどっちが持つ? 通常は「納品完了(支払い完了)時にクライアントに移転する」とします。 ただし、「実績としてポートフォリオに公開する権利」は留保しておくとスムーズです。 |
| ④ 修正回数の制限 | 【最重要】ここだけは絶対に入れてください! 「修正は2回まで無料。3回目以降は1回につき〇〇円」と書く。 これがないと、「なんかイメージと違う」という感覚的な理由で10回以上修正させられ、時給が100円になります。 |
| ⑤ 禁止事項 | 秘密保持契約(NDA)など。 もらった素材データを外部に漏らさない、SNSで愚痴らない、などの約束です。 |
**表の補足解説:**
特に**「④ 修正回数の制限」**は、初心者が一番泣きを見るポイントです。
クライアントは悪気なく「あ、ここも直して」と言ってきます。
最初に「3回目からは有料です」と握っておくだけで、クライアントも「まとめて修正指示を出そう」と工夫してくれるようになり、結果的に作業効率が上がります。
クラウドサインなどの電子契約を使おう
「紙に印刷して、製本テープを貼って、ハンコを押して、郵送して…」
そんな昭和なやり方はもう不要です。
今はクラウドサインやfreeeサインなどの電子契約サービスを使えば、メールでURLを送るだけで契約完了です。
* **メリット**:印紙税(4000円とか)がかからない。郵送代も不要。即日締結。
* **無料プラン**:月数件まで無料のサービスが多いので、個人なら無料枠で十分です。
これを使えば、「しっかりしたフリーランスだな」と信頼感もアップします。
4. 下請法(したうけほう)を知っていますか?

「クライアントの言うことは絶対」だと思っていませんか?
あなたが個人(フリーランス)で、クライアントが資本金1,000万円以上の法人である場合、**「下請法」**という法律が、弱い立場のあなたを守ってくれます。
親事業者(クライアント)がやってはいけないこと
この法律では、立場の強いクライアントが以下のようなことをすると**違法**になり、公正取引委員会から怒られます。
1. **買いたたき**:相場より著しく低い金額を無理やり押し付ける。「予算ないから500円でやって」など。
2. **受領拒否**:納品物にミスがないのに、「やっぱ企画自体なくなったから要らない」と受け取らない。
3. **支払遅延**:納品から60日以内に代金を払わない。
4. **やり直し**:クライアントの勝手な都合で、無償でやり直しをさせる。


喧嘩する必要はないけど、「自分は法律に守られている」と知っておく動作 が、精神的な余裕を生むんだ。
まとめ

動画編集はクリエイティブな仕事ですが、一歩間違えれば法的トラブルに巻き込まれるビジネスでもあります。
- フリー素材は「商用利用OK」か必ず利用規約をチェックする
- クリエイティブ・コモンズの「NC(非営利)」は絶対に使わない
- 仕事を受ける前に「業務範囲」と「修正回数」を握っておく
- 不安なら電子契約書を締結する(無料ツールでOK)
これらは、クライアントを信用していないから行うのではありません。
**「お互いが気持ちよく仕事をして、長く良い関係を続けるため」**に行うのです。
契約書があるからこそ、お互いに甘えがなくなり、プロとしての仕事ができます。
まずは、今使っているBGMサイトの利用規約を読み直し、自分のPCに入っている「権利不明な素材」をフォルダから削除する動作 から始めてみてください。それがプロへの第一歩です!
